もこもこモコイ
00.一目惚れ
ライドウ&ノクターン:Maniax Chronicle
それは、力試しのような討伐のような――とにかくよく解らないライドウとの戦いが、どうにか終了した後のこと。
アスラには先程から――戦いの最中、いやその前から、気になっていることがあった。
視線が向かう先は、戦いを仕掛けてきた相手ライドウの、足元。そのスラリと伸びた足を隠す長い外套にしがみ付きながら、ちょこんと顔を覗かせて此方を見ているものが居た。
出会った当初からずっと、どうしたことか此方を見つめている悪魔。
アスラはまだその悪魔のことを知らなかったが、ライドウが口にした名前を覚えていた。
確か名は――”モコイ”と、ライドウが言っていたか。
そのモコイという悪魔からの、凝視に近い視線。
しかし、警戒している様子ではないし、敵意の類でもないようだ。
どちらかというと、それは――……いや、気のせいだと思いたい。
アスラが視線の意味について考えていたその時、寡黙なライドウが口を開いた。
「……どうした、モコイ。」
するとモコイはライドウを見上げ、口元に手を当てるとむふふと含み笑った。
「どぅふふふふ。サマナーくん、聞きたい?」
だが、ライドウは首を横に振って言う。
「……否。さしては。」
「あはん、冷たい。デハ、ボクの身に起きたこと……聞いてくれる?」
「……告知があるのならば、言の葉を紡げばいい。」
「本当にチミは難しい表現をするね。ま、いいや。」
何処までも素っ気無いライドウに、こほん、と咳払いをしたモコイは、次にアスラへと視線を向けて言葉を繋げる。
「ボクってば、恋しちゃったミタイ。……むふ。」
「……何に、対してだ。」
「恥ずかしいねチミ。それを訊くのかね。」
身体を揺らめかせながらライドウの傍に寄ると、彼の外套を掴み其処へ身を隠すモコイ。
そうした上で――ちらり、と。
ライドウの外套の裾から、モコイは顔だけを覗かせて。
それから意味ありげに、ちらちらと。
そして意味深に、まじまじと。
見つめる動作をこれ見よがしにアスラに対して行う。
「な、なんだ? ――待て、何でこっちを見るんだ……!?」
視線の先に居たアスラは、非常に嫌な予感を覚えて動揺する。
「……モコイ。」
そんな状況の中、止してくれればいいのにライドウがモコイに答えを促したものだから堪らない。
モコイは恥ずかしげに顔に手を当てると、身体をもじもじくねくねさせながら話し出す。
「あのネ、あのネ……――ねえ人修羅くん。チミ、恋ってどう思うカネ?」
「うぇあっ!?」
急に話を振られたアスラは、予想していた通りの答えを聞いて情けない声を上げた。
モコイはライドウの外套の端に”のの字”を書きながら、尚もとんでもないことを口にする。
「ボクともれなく、デンジャラスチックで妖しいランデヴー……とか、いかがっすかチミ。」
「モコイ……まずは、”オトモダチ”というものから、開始するのではないか。」
「いや違うから! てか煽るな、止めろよライドウ!?」
モコイの発言にアスラは頭痛を覚えたが、ライドウの反応にも眩暈がした。
何だかよく解らないが、これから自分は非常に面倒なことに巻き込まれていくらしい。
アスラは、手にした燭台――「己の運命を示す」というメノラーに視線を落とすと、大きな溜め息を吐いて項垂れる。
しかしそれは、メノラーのせいでは無いのだろうが。